ブランディング成功事例:石栁北原様(石材店/長野・諏訪市)

売り上げが下がる一方だった石材店が
一からブランド構築のプロセスを積み上げて売り上げアップに成功!

石栁北原(いしりゅうきたはら)(石材店/長野・諏訪市)の例
<一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会の事例です。>

諏訪大社の隣で創業135年と老舗ながら、どこにでもありそうな墓石店だった「石栁北原(いしりゅうきたはら)」。
5代目の社長に代替わりしたものの、売り上げは下がる一方…。
過去最低売り上げを2年連続更新してしまったことをきっかけに、店舗の改装を含めて計画し、売り上げの再建を図りたいとブランド・マネージャーとともに「リ・ブランディング」に着手しました。

「3C分析」で自社を知る

石栁北原のプロジェクトチームが、まず初めに取り組んだのが、3C分析(*)。
自社の強みと弱み、顧客や競合他社など周りを取り巻く環境を挙げて、自社の事業を俯瞰して分析してみることに。

(*3C分析:3Cとは「Competitor=競合」「Company=自社」「Customer=市場、顧客」の頭文字をとったもの。自社を取り巻く環境や市場での可能性・戦略などを分析するためのフレームワーク)

その中で自社の強みとして出てきたのは
>>「創業135年」「老舗」「一級技能士の資格」「オーダーメイド」「日本庭園」など

一方、弱みは
>>「価格が高い」「営業力のなさ」「量産できない」などなど

顧客のニーズは
>>「安さ」「信頼」「対応力」「良いもの」「相談にのってくれる」など

それに対し、競合他社を見てみると…
まず、直接競合として挙げられたのが「〇〇石材店」や「〇〇墓石」などといった地元の同業者。
ホームページやチラシを見てみてもどの企業も似たり寄ったりで、目立った特徴はなし。

間接競合としては、最近墓石の売上を伸ばしてきている「地元の葬儀場」「セレモニーホール」「仏壇店」など。

それらの企業は
「葬儀とセットで墓石を買えば安くなります!」
「仏壇とセットで墓石も!」といったセット販売や、新聞のお悔やみ情報を毎日チェックして故人のお宅にDMを送付、営業をかけるといった典型的な営業方法で売り上げを伸ばしていました。

3C分析後、同社は「創業135年」「老舗」「一級技能士が丁寧に対応」「地域で最も信頼できる墓石屋」を、競合他社とバッティングしないブルーオーシャンとして目指すことに決めました。

ペルソナから見えてきたもの

その次に、墓石を頼みたい人はどんな人なのかを探るべく、市場を細分化する「セグメンテーション」、顧客を絞り込む「ターゲティング」を行い、架空のターゲット像(「ペルソナ」)を設定する「STPマーケティング」を行いました。

出来上がったペルソナは、木村太郎さん。56歳、年収600万円のサラリーマン。
木村さんはとてもやさしく親思いの性格。

そんな木村さんが突然母を亡くし、今まで無関心だった「墓石」を購入しなければならなくなった時、どんな気持ちで、どんなお店で、どんな墓石を買いたくなるのか。
ペルソナである木村さんの気持ちを想像し、プロジェクトチームで徹底的に話し合った結果、1つの気づきがありました。

それは「墓石を買いに来る人は、洋服や食品を買いにくるのとは違い、ウキウキとしたポジティブな気分ではなく、どこかに悲しさや切なさを持ち合わせているということ」

そう考えたときに、間接競合である地元の葬儀場やセレモニーホールなどが行っている営業方法は、果たして正しいのか…?
悲しんでいる人に「今ならお安いです」「セットなら安くします」などのDMを送りつけるような営業方法でいいのか…?

「それでは駄目だ…!」とチームが思い始めたとき、会長夫人が一言
「きっと木村さんは寂しいのよ、故人との思い出をとことん聞いてあげたいわ」。

この一言をきっかけに、石栁北原の方向性が決まりました。

 

「心に寄り添う墓石屋」になるために― ブランド要素・体験を一貫

石栁北原が目指すべき方向、それは「心に寄り添う墓石屋」
このキーワードがブランドアイデンティティとなりました。

「心に寄り添う墓石屋」を実現するべく、目に見えるアウトプットとしてロゴのリニューアル、キャッチコピーの作成からはじまり、店舗(パッケージ)の改装に着手。

田舎のどこにでもありそうなトタンの店舗を、塗り壁、白木、よろい張り、大きなのれん、瓦の大屋根に改装することで、諏訪大社の隣に似合う、老舗感と風情ある店舗に改修。
墓石の展示スペースには屋根をかけることで、150万円ほどする高価で想いが込められた墓石を大切に展示できるよう心掛けました。

営業面では想いが込められた墓石を安売りすることはやめよう、傷心の人にDMを送るといった営業方法はやめよう、との想いから競合他社とは反対に「安売り・値引き・セールス・売り込み一切禁止」としました。

お客様がご来店されたら、まずは女性陣がお出迎えし、店の奥にある自慢の日本庭園を眺めながらお茶とお菓子を召し上がってもらう。
そこで、女性陣はお客様から故人の思い出や想いをとことん聞く。
その上で、「故人にはどんなお墓を立ててあげましょうか」と心に寄り添いお伺いする。

そういった、お客様との接点や体験も含め、「心に寄り添う墓石屋」として一貫性を持った、リ・ブランディングを進めていきました。

 

ペルソナの想いをとことん掘り下げることで売上UP

そうして迎えたリニューアルオープン。

お披露目の2日間で5基もの墓石の予約が入り、たった2か月間で年内の予約がいっぱいに。
過去最低であった売り上げも見事V字回復。
また、以前は全く売れなかった国産の石を使った高価な墓石がよく売れるようになったのも、ブランディングの成果でしょう。

振り返ってみると、もともと石栁北原には、「創業135年」「老舗」「一級技能士の資格」「オーダーメイド」「日本庭園」など素質・素材がそろっていたため、情報を整理して余分なものをそぎ落としていくことで「在るべき姿」に立ち戻ることができたのです。

ブランド構築を通し、ペルソナの気持ちをとことん掘り下げ、どうしてあげることがペルソナの満足につながるかを徹底的に考えることが、売上回復の切り口となることを改めて気づかせてくれる事例でした。

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